静かに進行する「舐め壊し」の実態
猫の「舐め壊し」とは、自分の体を過剰に舐め続けることで皮膚に炎症や傷が発生し、毛が抜けてしまう状態です。
多くの飼い主さんは、この症状に気づいた時には既に進行していることが多いのが特徴です。
我が家の愛猫ハナ(11歳・メス)も例外ではありませんでした。
この記事では、ハナの舐め壊し体験と、私たち家族が試行錯誤した対策の全てをお伝えします。
同じ悩みを抱える飼い主さんの参考になれば幸いです。
最初の兆候:「あれ?ハナのお腹が…」
初めての異変
ある日の夕方、ハナをなでていた時のことでした。お腹の毛並みが妙に薄いことに気づきました。
最初は「換毛期だからかな?」と軽く考えていましたが、翌日には明らかに赤みを帯びた皮膚が露出していました。
「何かおかしい」と思い、ハナの行動を注意深く観察し始めると、一日の大半をお腹や足を舐めることに費やしていることに気づいたのです。
ある夜、私たちが寝静まった後にリビングで延々と同じ箇所を舐め続ける姿を発見しました。これは明らかに通常の毛づくろいとは異なるものでした。
動物病院での診察
翌日、急いで動物病院へ連れて行きました。
獣医師は一目見るなり「これは典型的な舐め壊しですね」と診断。
そして可能性のある原因について詳しく説明してくれました。
- アレルギー反応(食物・環境)
- 精神的ストレス
- 環境変化によるストレス
- 寄生虫(特にノミやダニ)
- 皮膚疾患
- 甲状腺機能亢進症などの内分泌疾患
獣医師がハナの生活環境について詳しく質問した結果、2ヶ月前に迎えた子猫「モモ」との関係性がストレス要因である可能性が高いと指摘されました。
確かに、モモが来てからハナは少し神経質になっていたように思います。静かな場所を求めて、以前は行かなかった高い棚の上で過ごすことが増えていました。
治療への道のり:思いがけない発見
1. エリザベスカラーとの格闘
獣医師の指示で最初に試したのはエリザベスカラー(通称エリカラ)でした。これは猫が自分の体を舐められないようにするための首輪です。
しかし、装着したハナは極度のストレスを示し、動くことすら拒否。食事も水も摂ろうとせず、24時間後には外さざるを得ませんでした。
2. 術後服という選択
エリカラの代わりに、術後の猫用の服を試すことにしました。
最初は違和感からか、ぎこちない動きをしていましたが、エリカラよりは受け入れてくれました。
約1週間の着用で傷口は徐々に回復の兆しを見せました。
しかし、服を脱がせると即座に舐め始めるという問題は解決していません。
「ハナは一生服を着て過ごさなければならないのか」—そんな絶望的な考えが頭をよぎりました。
食事療法への挑戦
食事の変更が必要な場合
獣医師からは「食事内容も見直してみましょう」と提案されました。
獣医師からのアドバイスで、食物アレルギーの可能性も考慮し、食事内容の見直しを行いました。
穀物フリーの高品質フードへの変更、特にタンパク質源を限定した「単一タンパク質フード」を試しました。
特に効果があったのは、鶏肉から魚ベースのフードへの変更でした。ハナは鶏肉に対して軽度のアレルギー反応があったようで、食事変更から2週間ほどで皮膚の赤みが若干軽減しました。
しかし、舐め行動自体はまだ続いていました。
環境の見直し
ウチの子はストレスの可能性でしたが、毎日の生活でストレスを感じているようには見えませんでした。
しかし、猫は環境の変化に敏感な動物です。やはり何かにストレスを感じているのは確かで舐める頻度は全く減りません。
家具の配置を変えたり、猫のトイレを変えたりしたなどの環境変化ではないため、どうストレスを解消すればいいのか判断が難しい状況です。
もし、愛猫に環境変化(部屋の模様替えなど)による舐め壊しの診断が出た場合は、まずはストレスの元を改善をされてください。
サプリメントの効果
次に試したのは、皮膚の健康をサポートするオメガ3脂肪酸を含むサプリメントでした。これを与え始めてから徐々に毛の生え具合が良くなり、舐め壊しの範囲も縮小してきました。
特に効果的だったのは、サーモンオイルを少量(5滴程度)フードにかけることでした。
ハナは魚の風味が好きなようで、喜んで食べてくれます。これにより皮膚の状態は改善されましたが、根本的な解決にはまだ至っていませんでした。
他の猫の舐め壊し体験談
ケース1:ノミが原因だった
私の友人宅でも同じような問題がありました。5歳になるアメリカンショートヘアの「ミミちゃん」が突然お腹周りを執拗に舐め始めたそうです。
当初は「新しい家具配置によるストレスでは?」と考えていました。しかし動物病院で検査した結果、小さなノミが原因だったことが判明しました。
駆除薬を使ったところ、わずか1週間で症状が落ち着き、それ以降は元気いっぱいになったそうです。
ケース2:ストレスが原因だった
別の知人の猫(2歳のラグドール)は、引っ越し後に舐め壊しを発症しました。新しい環境に適応できず、不安が高まった結果、過剰なグルーミングをしてしまったようです。
ケース3:歯の問題が原因だった
猫カフェで働く友人が世話をしている「レオン」(7歳・オス)は、首周りを執拗に舐め続け、皮膚が見えるほどになっていました。
様々な対策を試しましたが改善せず、詳細な検査の結果、歯の根元に感染症があることが判明。実は、猫は体の痛みや不調がある場合、関連しない部位を舐めることで気を紛らわせることがあるのだそうです。
歯の治療を行った結果、舐め壊しも自然と治まったとのことでした。このケースは、見えない内部疾患が舐め壊しの形で表れる可能性を教えてくれます。
ケース4:食物アレルギーが原因だった
私の姉の飼っている「チロ」(3歳・オス)は、突然背中と尾の付け根を激しく舐め始め、すぐに毛がなくなってしまいました。
初めの診断では「ストレス性の舐め壊し」と言われましたが、食事内容を詳しく調べたところ、新しく与え始めたおやつに含まれる添加物(着色料)がアレルギーの原因だったことが判明しました。
おやつを中止し、アレルギー対応フードに切り替えたところ、約3週間で舐め行動が劇的に減少。2ヶ月後には完全に毛が生え揃ったそうです。
舐め壊し対策10のポイント
愛猫の「舐め壊し」による皮膚の状態を見ることはつらく、私たちが効果的だと感じた対策をまとめました。
- 徹底した原因特定:アレルギー検査や皮膚を擦り取るスクレイピング検査などで正確な診断。
- 複数の獣医師に相談:意見が分かれることもあるため。
- 食事記録の作成:食事とその反応を記録して傾向を把握する。
- 定期的なブラッシング:毛玉予防と皮膚観察を兼ねる。
- 爪切りの徹底:舐め行動から引っ掻き行動への移行を防止。
- 安全な隠れ家の確保:ストレス軽減のための「逃げ場」作り。
- 規則正しい遊び時間:エネルギー発散と気分転換とスキンシップ。
- 環境エンリッチメント:キャットタワーや窓辺の展望スポット設置
- 定期的な環境チェック:新しい家具や洗剤などの影響を考慮。
- 飼い主自身のリラックス:飼い主の緊張やストレスは猫に伝わる。
まとめ:ハナから学んだこと
ハナの舐め壊し治療を通じて、私は猫という生き物の繊細さと、彼らの訴えに耳を傾けることの大切さを学びました。
表面的な症状だけでなく、その奥にある真の原因を探ることの重要性も理解できました。
現在のハナは、まだ完全に舐め壊しが治ったわけではありません。しかしモモとも徐々に良い関係を築き始めています。
猫の舐め壊しは、一見すると単なる癖にも思えますが、その裏には様々な健康問題や心理的要因が隠れています。
愛猫に何か異変を感じたら、早急に行動し、専門家に相談することが何より大切です。
まだまだ、ハナの「舐め壊し」との戦いは続きますが、あなたの愛猫が快適に、そして健康に過ごせるよう、この記事が少しでもお役に立てば幸いです。

もし愛猫が過剰に舐めている様子が見られた場合は、早めに獣医師に相談し、原因を探ることが大切です。飼い主として、愛猫が快適に過ごせるよう日々のケアを心がけましょう。
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