ヒマラヤンに出会ったあの日から
ヒマラヤンという猫種をご存じですか?
その名前を初めて聞いたとき、私はなんとも異国的でミステリアスな印象を受けました。
実際に出会ってみると、その印象は間違いではありませんでした。長く美しい被毛、吸い込まれそうな青い瞳、そして何よりもその穏やかで包み込むような性格。
この記事では、そんなヒマラヤンの誕生秘話から、私自身の体験を交えた暮らしのエピソード、そしてヒマラヤンにまつわる豆知識まで、たっぷりとご紹介します。
これからヒマラヤンを迎えたい方、またはすでに暮らしている方にも、「もっとこの猫を好きになる」ヒントをお届けできれば幸いです。
ヒマラヤンの誕生秘話|夢を追った人々の努力の結晶
理想の猫を目指した交配計画のはじまり
ヒマラヤンは、単に「ペルシャ猫に似ている長毛猫」ではありません。
実はこの猫種は、20世紀初頭、「ペルシャの優雅な被毛」と「シャムの神秘的なポイントカラー」を持つ理想の猫を作りたいという情熱から生まれました。
1920年代のスウェーデンで、ある研究者がシャム猫とペルシャ猫を掛け合わせ、長毛でポイントカラーを持つ猫の作出を試みたのが始まりです。
ですが、当時の交配技術では遺伝的な安定性が得られず、計画は頓挫します。
ヒマラヤンの原型「デビュタント」の誕生
研究はその後アメリカとイギリスに引き継がれました。
アメリカの遺伝学者たちは、長毛の黒猫を加えるなど試行錯誤を繰り返し、何世代にもわたる交配の末、1935年に「デビュタント」という猫が誕生。
彼女は長毛で美しいポイントカラーを持ち、現在のヒマラヤンの原型とされています。
私はこのエピソードを初めて知ったとき、なんとも言えない感動を覚えました。
長い時間と多くの手間をかけて、理想の美しさと性格を追い求めた結果が、今、私のそばにいる猫に繋がっていると思うと、ただの「可愛い」では片付けられない深さを感じたのです。
イギリスとアメリカでの品種公認と名称の由来
公認までの道のり
1950年代に入ると、イギリスでは「クメール」という名で交雑種の改良が進み、1955年にGCCF(イギリスの猫種登録団体)によって品種として登録されました。
アメリカでも1957年にTICAやCFAといった権威ある団体から公式にヒマラヤンとして認められます。
「ヒマラヤン」という名前の意味
意外に思われるかもしれませんが、ヒマラヤンという名前はヒマラヤ山脈とは直接関係がありません。
その由来は、ヒマラヤウサギという動物が寒い部位(耳・足先・尾など)に濃い色が出るという特徴を持っていることに由来しています。
ヒマラヤンの毛色パターンがそれに酷似していたため、この名がつけられたのです。
我が家でもこの話を知ったとき、「うちの子、本当にヒマラヤウサギっぽいよね!」と家族みんなで笑い合ったのをよく覚えています。
ペルシャ猫とシャム猫|ヒマラヤンの源流となった2大猫種
ペルシャ猫の優雅さ
ペルシャ猫は、古代ペルシャ(現イラン)をルーツに持ち、「猫の王族」とも称される猫種です。
被毛は豊かで長く、まるで絹のよう。顔立ちは丸く、性格は非常に穏やかで、静かな空間を好みます。
私の友人宅のペルシャ猫は、来客があっても決して動じず、高い棚の上からじっと見守っているような存在感でした。
撫でたときの感触はまるで高級カシミア。静かに寄り添うその姿勢に、日々の疲れも癒されたものです。
我が家のヒマラヤンにも、そんなペルシャらしさが強く出ている子がいます。まるで貴婦人のような所作で、他の猫たちとは一線を画す落ち着きがあります。
シャム猫の情熱とおしゃべり好き
一方、シャム猫はまるで正反対の魅力を持っています。
細身の体、澄んだブルーの目、短毛ながら鮮やかなポイントカラー、そして何よりも人懐っこく、よく喋ります。
私の実家ではシャム猫を飼っていたのですが、私が帰省すると誰よりも早く「おかえりー!」と鳴いて迎えてくれました。
その愛嬌の良さと、好奇心旺盛な性格は、まさに犬のよう。
その陽気な性格も、ヒマラヤンの一部にしっかりと引き継がれていると感じています。
私とヒマラヤンの35年|暮らしの中で見えてきた魅力
ヒマラヤンとの生活を始めたのは今から35年前。
最初の出会いは、とあるペルシャ猫ブリーダーさんの紹介でした。
生後3ヶ月のその子は、まだ身体も小さく、でもふわふわの被毛とくりっとした青い瞳が印象的でした。まさに一目惚れです。
それからというもの、ヒマラヤンとの生活は私の日常を豊かに変えてくれました。
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冬の朝、毛布の中で一緒に丸くなって眠る幸せ
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窓辺で日向ぼっこをしながら眠そうにまばたきする姿
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換毛期のブラッシングタイムで家族みんなが集まる時間
どれもが特別な瞬間であり、今では「ヒマラヤンがいる生活が当たり前」と思えるほど、心の中心にいます。
ヒマラヤンが世界中で愛され続ける理由
キャットショーでも注目の的
ヒマラヤンはその美しい見た目と整ったスタンダードにより、世界中のキャットショーでも数々の賞を受賞してきました。
ポイントカラーのコントラスト、長く美しい被毛、そしてやわらかな顔立ちは、まさに芸術作品のような存在です。
SNSでも話題に
私のSNSにも海外のヒマラヤンファンからコメントをいただくことがあります。

「うちの子と似ている!」「この目に癒される」など、国境を越えてヒマラヤン愛好家たちがつながれるのは本当に素晴らしいことです。
ヒマラヤンを迎える前に知っておきたいこと
項目 | 内容 |
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鳴き声 | 比較的静か。要求があるときだけ小さく鳴く傾向あり |
性格 | 穏やかでおっとり、人懐こいが無理は嫌う |
被毛ケア | 毎日のブラッシング必須。換毛期は特に注意 |
健康面 | 多くは健康だが、涙やけや鼻づまりなどの傾向も |
環境 | 静かで安心できる空間が理想。急激な変化は苦手 |
まとめ|ヒマラヤンは「人と猫の愛の結晶」
ヒマラヤンは、ただの「可愛い猫」ではありません。
その背景には、何十年もの間にわたる研究者・ブリーダーたちの挑戦と、愛情を込めた交配の歴史があります。
ペルシャの優雅さと、シャムの情熱を宿したこの猫は、まさに「奇跡の猫種」。
その美しさ、穏やかな性格、そして私たちに寄り添う姿は、暮らしを確実に豊かにしてくれます。
もし、あなたが今ヒマラヤンを迎えようか迷っているなら、ぜひ一度その瞳を覗き込んでみてください。
その奥には、人と猫が紡いできた愛の物語が静かに宿っているはずです。
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