「猫って、いい匂いがするよね」
そんな言葉が、猫と暮らす人のあいだで自然に交わされるようになりました。
中には、毎日のように猫の匂いを嗅いでしまう「猫吸い」が日課になっている人もいるのではないでしょうか。
私もそのひとり。ヒマラヤンという長毛の猫と暮らしており、ふわふわの毛並みに顔をうずめた瞬間に広がる“あの香り”に、心の底から癒されています。
今回は、「猫の匂いはどんな香り?」「なぜ心地よく感じるの?」「どうすればその香りを保てるの?」といった疑問に、私の体験を交えてお答えしていきます。
猫の匂いとは?言葉にしづらいやさしい香り
猫の匂いを明確に表現するのはなかなか難しいものです。でも、あえて言うなら、こんなふうに感じます。
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晴れた日に干した布団のような、あたたかい香り。これを「太陽の香り」といいます。
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ほんのり甘く、どこかミルクを思わせる香り。
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無垢な生き物から漂う、清らかで落ち着く香り。
猫種や環境によって微妙に違いはあるものの、共通しているのは「清潔感があり、穏やかな印象を持つ香り」であるということです。
うちのヒマラヤンは、耳の後ろやおでこから、ふわっと甘い匂いがします。
粉ミルクのようなやさしい香りが、ふとした瞬間に漂ってきて、「ああ、今日もそばにいてくれている」と実感させてくれるのです。
ヒマラヤンの香りは特別?
長毛種であるヒマラヤンは、空気を多く含む柔らかな毛並みをしています。
そのため、香りもまといやすく、「ふわっと香る幸せ」を感じやすいように思います。
とくにお昼寝のあと、そっと近づいた瞬間に香るのは、“陽だまりの香り”。
優しい日差しに包まれたような、安心感に満ちた香りです。
そして私が個人的に大好きなのがおでこの毛の匂い。
ヒマラヤンのおでこは、まるで赤ちゃんの産毛のようにやわらかく、その部分から漂う香りは、ぬいぐるみのような懐かしさがあります。
なぜ猫の匂いは「いい匂い」と感じるの?
実は、「猫の匂いが好き」という感覚は、脳科学的にも説明できます。
猫と触れ合うことで、脳内では「オキシトシン」や「セロトニン」といった“癒しホルモン”が分泌されます。
これらのホルモンは、リラックスや幸福感をもたらす働きがあり、猫と過ごすことで自然と心が穏やかになるのです。
さらに、匂いは五感のなかでも特に記憶や感情と結びつきやすい感覚です。
つまり、猫の匂いを嗅ぐことによって「安心できた記憶」や「幸せだった時間」が無意識に呼び起こされる。
それが、猫の香りに癒される理由のひとつなのです。
加えて、猫の体温は人より少し高く、38〜39度前後。
この温もりとともに感じる香りが、私たちの“本能的な安心感”を刺激しているのではないかと思います。
猫は「無臭」な生き物──その理由とは?
「猫っていい匂いだよね」と言われる一方で、「猫は基本的に無臭」という意見もよく聞きます。
これは、猫の生理的な特徴や生活習慣に大きく関係しています。
まず、猫はとても清潔好きな動物です。
1日のうち数時間を毛づくろいに費やすほど、自分の体をこまめに手入れします。
唾液には抗菌作用があるため、体の表面に雑菌が繁殖しにくく、結果として体臭も発生しづらくなっています。
次に、猫は汗腺が少ないという特徴があります。
人間や犬は全身に汗腺があるため、汗とともに臭い物質が分泌されやすいのですが、
猫の汗腺は主に肉球のみに存在します。そのため、全身から強いにおいを放つことが少ないのです。
また、猫の皮膚にはフェロモンを分泌する腺がありますが、これらは人間には「嫌なにおい」として感じにくい性質を持っています。
むしろ、甘く感じたり、安心感を抱かせたりする場合もあります。
このような生理的特徴や生活習慣により、猫は「無臭に近い動物」とされるのです。
そのうえで、わずかに香るやわらかな匂いが、私たちにとっては“特別な癒し”に感じられるのではないでしょうか。
実体験:猫吸いで救われた日
ある日、仕事でひどく落ち込んだ夜のこと。ふと見るとうちの大輔(ヒマラヤン)がソファの上で丸くなって寝ていました。
疲れていた私は、大輔をそっと抱き上げ、おでこを毛にうずめました。
その瞬間、ふわっと香ったのは、いつもの甘くてあたたかな匂い。
涙ぐみながらも、「大丈夫、大丈夫」と自然に気持ちがほぐれていく──。
そのとき私は、猫の匂いが“癒しのサプリ”のように心を支えてくれているのだと、改めて気づきました。
猫の“いい匂い”を保つためにできること
猫はもともと匂いが少ない生き物ですが、その香りを保つには、私たち飼い主の工夫も大切です。
1. ブラッシングを毎日行う
長毛種のヒマラヤンは、毛にホコリや皮脂が溜まりやすいため、毎日のブラッシングが理想的です。毛がもつれず通気性がよくなることで、自然と香りもふんわりと保たれます。
2. 食事の質を見直す
体臭は食生活とも深く関係しています。質のよいキャットフードを選ぶことで、健康状態を整えるだけでなく、体臭の原因を減らすことにもつながります。
3. 清潔な寝具を用意する
猫は自分の匂いを寝床に移します。お気に入りのブランケットやベッドをこまめに洗濯し、清潔を保つことで、猫本来のやさしい香りを引き立てることができます。
まとめ:猫の香りは、暮らしそのもの
「猫の匂いが好き」と感じる気持ちは、単なる嗜好ではありません。
それは、猫と過ごす日々のなかで自然と育まれていく、愛情や安心感の記憶です。
ヒマラヤンのふわふわの毛の奥にあるのは、そんな「暮らしの幸せ」そのものだと思います。
今日もまた、そばにいるだけで心が和らぐ――。猫の匂いには、そんな不思議な力があると信じています。
まるで過去の温かな思い出と現在をつないでくれるような、心地よい香り。
その柔らかくて甘い匂いを感じるたび、
私たちは「ここにいてくれてありがとう」と自然に思えるのです。
猫の匂いは、ただ「いい匂い」なのではなく、生活の一部であり、日々の癒しであり、ささやかな幸せそのもの。
皆さんもぜひ、愛猫との時間の中でその香りに包まれてみてください。

「猫吸い」は、心を整え、日常に潤いを与えてくれる、大切なひととき。猫って、ホントに尊い存在です。
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